人は、一つの不幸を必ず味わう生き物だと思う。




現に、うちは一つの不幸を味わっている。
それは非常に忘れがたい不幸であり、自らの戒めだとも思っている。

だが、それからは普通かつ幸せな日々が送れていた。

小・中学で特に気にするような事はなかったし、何も不自由な事はなかった。
受験もうまくいき、うちは高校生になった。

・・・のだが、

さん、君にはこの学校を辞めてもらう事にしたよ。」
「は・・・?」




Bon Voyage
P.01   転校というのはある意味人生を左右するものである



それは、彼女・が高校に入学してから三ヶ月経った頃である。
一学期も中間に差し掛かったこの時期に、いきなりは担任に呼び出された。
そして、驚くべき一言を言われたのである。
さん、君にはこの学校を辞めてもらう事にした」

「って、何でですか!?うちは何もしてないじゃないですか!」
「確かに君は何も問題を起こしてはいない、だが・・・今回は仕方がないと思ってくれ」

・・・何が『仕方がないと思ってくれ』だ!!

学校を辞めるという事を安易に捉えすぎるだろ!とは心中でツッコんだ。
担任はすまなそうな目でを見る。

「君は・・・この高校の生徒数を知っているかね?」
「・・・知らないです」
「そうか、君に辞めてもらう理由もそこにある。
この学校はいまや生徒数が1000人にものぼってしまったんだ」
「せ、1000人!?」
「だから、校長が少しずつ人数を減らしていけと言ってきたんだよ」
「・・・マ、マジですか・・・」
そんな高校の現状をは知らなかった為静かに顔を俯かせた。
「でも・・・何でうちなんですか?」
「ああ・・・それはな・・・気分だ」

「・・・さっきまでえらそうに言った癖に結局『気分』じゃねぇかコラアアアア!!」
その後、は担任の顔に思い切り黒板消し(みっしり粉つき)を投げつけた。

「で、先生。いや竹口さん。いや、おっさん。
うちはどの学校に『転校』するんですか?」
黒板けしを持ちながらはチョークの粉で顔が真っ白になっている担任・竹口に問うた。
竹口はずれた眼鏡を元に戻し、一言呟く。
「私立・・月香、学園・・・「死にさらせやああああああああ!!」

そして、はもう一方の黒板けしを投げつけた。

私立月香学園。
それはの近所にある高級学校の事である。
設備はどれも綺麗で概観を見るとまるで中世の城の様なデザインだった。
そんなモロ「高級です」といわんばかりのデザインや学校名が、は好きになれなかった。

「・・・ここか」
それから二日経ち、は銀色の門前に立っていた。
あのときに比べればショックはだいぶ小さくなった、と思いたかったが。
はぁ、と小さなため息をついてはその門をくぐる。

私立・月香学園と書かれたその門を。

渡された上履きに履き替えエントランスへと歩く
「ところどころ大きいな・・・」
外観だけでなく中までお城みたいだ、と感心する。
確か学校長が言うにはもうこの学校への手続きは終えているそうだった
は制服のポケットを漁り一枚の紙を開く
そこには自分の組や番号が書かれていた
1という数字を見てこの15年間でその数字に何回あったか思い出す
小学校のクラスでも1組であった事が多いし中学では万年1組だった
最初は偶然かと思っていたがここまで続けばもう偶然とは思えない
からしてみれば1というのはそれほどまでにひどく運命的な数字だった。

「ここが、一組か・・・」
は目の前に聳え立つ大きな扉に固唾を飲み込む
お、落ち着け・・・最初が肝心だ。何事も最初!
緊張で高鳴る胸をどうにか落ち着け扉の取っ手に手をかけ一気に引いた
ぎゃーぎゃーと騒がしかった教室がしん、と静まり返りクラスメイト全員の視線がに集中する。
それにどっと背中と顔から汗が噴出した

・・・胸を落ち着ける前二時間確認してくるんだったあぁあああ!!

追放・・・もとい転校初日にやらかしてはいけない失態だ、
は心中で叫びながらそう感じていた。