今日は最大の猛暑らしいです、




「・・・あっぢぃ・・・」
初夏も終わり、もう完璧に夏に入った今頃。
クーラーも何もない教室内は、既に蒸し風呂状態になっていた。
何故クーラーがないのか、そもそもクーラー自体はあるのだが
ここの校長・副校長が温暖化対策で殆どの教室のクーラーを止めてしまったのである。
それによって日射病で病院に運ばれる者が何人も出てきてしまった。
「あ、あづい・・・」
「水・・・水くれ・・・」
苦しそうな生徒達の断末魔が教室内に響く。
そこで、は最終手段に出た。
「・・・保健室、行って来る・・・」




P.05 保健室ってクーラーついてるよね?




「うわ・・・廊下まで暑いし・・・」
教室を抜け廊下に出ると、締め切りの窓からは暑い日差しがさしていた。
これじゃ保健室行く前にぶっ倒れるって・・・
はぁ、とは深いため息をついた後、動くのさえ億劫になっている両足でゆっくりと歩き出した

一階へと続く階段を下りていくと二階とは違い、少し涼しい風が吹いていた。
「はぁ・・・よかった」
暫くは暑さ地獄から解放される・・・
心中でほっと胸を撫で下ろしているとガラッ、と近くの部屋のドアが開き、
何だ、と一旦足を止めるとそこからいきなり女生徒が走り出てきた。
女生徒は立ち止まったにぶつかり、その拍子に何かがの足元に落ちてきた。
「あ、おい!」
何だろう、と思い足元を見るとそこには学校指定の赤いリボンが落ちていた。
おそらくあの女生徒のものである。
が後ろを振り返るも既にその女生徒はいなかった。
「・・・どーしよ」
落し物・・・って言うのか、これ・・・?
結局は職員室へと目的地が変わったことには変わりなかった。
本日二度目のため息をついた後、は廊下を歩き始める。
すると、
「・・・ん!」
急に口を覆われ、その瞬間意識をなくした。


「・・・はっ!?」
は意識を取り戻し、バッと勢いよく起き上がった。
「え・・・?」
先ほどの暑さはどこへ行ったのか、まるで廊下や教室の暑さが幻だったようにここは涼しかった。

・・・何、どうなってんだ?これ。
はすぐさま辺りを見回す。

真っ白な部屋内、鼻を掠める消毒液の匂い。

間違いない・・・ここ、保健室だ。

ここに転校してきてから一回も保健室にはお世話になった事はないが
感覚としてはそんな感じがしたのである。
だが、何故自分は保健室にいるのだろうか。

「・・・もしかして、廊下で倒れたのかな」
正直確信もないがここまで来た記憶が全くないというのも事実だった。

部屋のひんやりとした涼しい風が心地いい。
よく見れば、この部屋には生徒達が今現在渇望して止まないクーラーが設けられている。
流石に保健室までは止められなかったのかもしれない。

「にしても涼しいなー・・・」

今の状況から言えば、ここは天国同然だとは思った。
うーん、と伸びをしようとしたとき、何やら手に赤いものが握られていることに気づく。
ゆっくりと手を開くとそこには赤いリボンが握られていた。

「何でこんなのが・・・」
自分のものかと思ったが制服にしっかりと胸元で結ばれている。
他の人物のものかもしれないが、どうして自身が持っていたのか分からない。
「何で・・・?」

「気がついたか?」

すると、急に後ろから声が聞こえは即座に振り向いた。
白い白衣に対照色の赤いシャツと黒いネクタイ、それに左目の眼帯。
「とんだ間抜け面だったぜ?」
お前の寝顔。
そう言うと眼帯のついていない方の眼が愉快そうに歪む。
「なっ・・・」
この人、勝手に人の寝顔見たのかよ!?
いきなりの失礼極まりなさには言葉が出なかった。
「まぁ、さっき出て行った奴よりましだけどな」
「さっき?」
「そのリボンの持ち主だ」
「え!」
驚いて握られているリボンを見る。
「その女、そのリボンと俺のネクタイ交換してくれって言ってきやがったんだ」
今時、ネクタイ交換なんて古ィだろ?
男は吐き捨てるように言う。
「確かどっか古ぼけた学園じゃそんなしきたりもあるけどよォ、いきなり恋人扱いされるのはごめんだ」


一回ヤッた位で。


「・・・は?」
「あ?」
「・・・何でもないです」
は口ごもった。
先ほどの言葉は聞き間違いだったのだろうか。否、聞き間違いにしておきたかった。
それに再び聞きなおす勇気もなかったのである。
「こんな時にシャマルはいねェし、めんどくせーからいつもみたいに追い払ったんだ」
まぁ、あいつがいないほうが良かったか・・・
「・・・いつもみたいに?」
「ああ、こんな風にな・・・」
すると、男の姿はの視界から消えた。


いや、目の前に・・・いる?


今現在、分かるのは唇に触れているわずかな感触。
それがどういうことなのか、分かるのに三分程かかった。

「・・・ん!?」

止まっていた思考が再び動き出し、バタバタと暴れるもすぐに止められる。
その瞬間、するりと入ってきた“何か”にはゾクリと背筋を震わせた。

「・・・っ、放せぇコラアアアアア!!」

げしいぃ!!
かろうじて自由だった足で男を蹴ると、そのまま男は床に倒れる。
「い、いいい・・・いきなり何すんですかあんた!?」
「いってェな・・・てめーこそ何すんだ」
「あんたが変な事するからだろーが!!」
キレ気味な男にはすかさずツッコんだ。
「だいたい、あんた保険医じゃないのかよ!?」
「そうだけど」
「・・・嘘ですよね」
「失礼だなてめェ」
そう言いながら保険医はベッドの上に腰掛ける。
「高杉だ」
「へ?」
「お前は?」
「あ・・・です、
そう言うと保険医・高杉は薄く笑った。
「・・・何ですか」
「いや、噂に聞いてた。お前の事」
『前にいた高校から追放された転校生』・・・だろ?
「・・・そんな噂流れてたんですか」
うげ・・・とは嫌そうに顔を歪める。
その顔に高杉は笑みを深めた。
「どんなあくどい顔してんのかと思えば、こんなチビガキだったしな」
「なっ!」
いかにも心外だ、と言うような顔をしたに高杉はククッ、と笑みを零す
むっとしたはすぐさまベッドを降りた。
キーンコーンカーンコーン・・・
「あ、」
「帰んのか?」
「帰りますよ、そろそろクラスに帰らなきゃ怒られるだろうし」
「ふぅん・・・」
「何ですかその目は」
「いや、今更あんな炎天下真っ只中な教室に戻るのかと思ってな」
「そうですけど、何か・・・」
すると、
「ここにいろよ」
すぐに腕を引かれ、耳元で囁かれる。
クーラーで冷たい筈の室内がいやに暑く感じられた。
「・・・いや!やっぱり帰ります!」
さ、さよならっ!!
すぐさま高杉の腕を振りほどき、はすぐに保健室を出た。

、ねェ・・・」
噂より随分可愛い奴じゃねェか。
「こりゃ、面白くなりそうだ」

そして高杉の予想通り、は再び炎天下真っ只中の教室で苦しむ事になったのであるが・・・

「はっ、そういえばあれがファーストキスだった!!」

もう、後の祭りである。